第10話 ささやく羽根
任務を終えたひよりは、封霊会への報告を終え、重い足取りで寮へ戻っていた。
治療でようやく沈静化したはずの“症状”──その火照りが、またじわじわとぶり返している。
歩くたび、スカートの裾が太ももに擦れ、わずかな刺激が身体の奥に伝わってくる。
それだけで、背筋が微かに跳ね、呼吸のテンポが狂いそうになる。
(これじゃ、また…治療が必要になるかも……)
そんな思いが頭をよぎったそのときだった。
静まり返った寮の廊下に、明るい声が響いた。
「ひより先輩っ、おかえりなさいですよっ♡」
振り返ると、後輩の天羽みくが手を振りながら駆け寄ってきた。風をまとったような軽やかな動き。
「みく…こんな時間にどうしたの?」
「ん~、ちょっと外の風の様子、見てたんです。霊気の流れとか、読めそうかなって」
そう言いながら、みくはぴょんとひよりの目の前にしゃがみこんだ。
骨盤あたりの視線の高さあたりから、上目遣いでひよりの表情を覗き込んでくる。
「それより……先輩、なんか様子がおかしいですよねぇ?」
突然距離を詰めたみくに、ひよりはたじろいだ。
「えっ……べ、別に…そんなこと……」
「え〜? ほんとですかぁ?♡ なんか、怪しいな〜」
みくの目が、どこかいたずらを企んでいるように細まる。
指先に持った細長い羽根をふわり動かし、風をおこしてスカートをひらりと揺らした。
それだけで布地がふわりと揺れ、ひよりの素肌にひやりとした風が触れた。
(……っ)
任務中にまとった汗と、淫霊の残滓が乾ききっていない感触が、一瞬で蘇る。
湿った下着に風が当たり、熱のこもった部分が冷やされて、むずがゆい刺激が生まれる。
「ほら、ちょっと火照ってるじゃないですかっ♡」
「……なっ……!」
顔を赤らめたひよりが視線を逸らしたその隙に、みくはひよりの背後へと回り込む。
次の瞬間、耳元にそっと息をかけるようにして、意地悪く囁いた。
「まさか任務で……なんか、あったんじゃないですかぁ?」
その声は、無邪気さを装いながらも、どこかひよりの“奥”に触れようとするような響きをもっていた。
みくが持つ羽根が、スカートの中へそっと忍び込み、中でさわさわと内ももを刺激する。
くすぐったいような感覚に、ひよりはわずかに肩をすくめた。
「ちょっと……やめてってば……」
小声で制止を試みる。
だがその声には、どこか張りがなかった。
なぜか身体がそれを求めているかのように、思うように動かなかった。
ひよりは、これ以上、羽根が上がってこないように、片手をスカートの上から股のあたりを押さえる。
「だめですよ〜、手は横にして、ほら、気をつけ!…わたしがちゃんと癒やしてあげますから」
仕方なく言う通りに抑えていたゆっくり手を離すと、
羽根は奥へ入り込み、羽先がわずかに下着と肌との境界線をかすめた。
敏感になった肌に、羽先のひと撫でがまるで術のように染み込む。
ぞくり、と背筋が跳ねるたび、さきほどまでの戦闘で火照った熱が再び目を覚ます。
それを空気の流れから悟ったかのように、行為が次第にエスカレートしていく。
「も…もう、いいでしょ」
ひよりが抵抗して終わらせようとするのを遮るように、みくは続ける。
「え〜? 気になりますよぉ、これから一緒に任務するんですし、先輩のこと知っておきたいんです♡」
からかうように言いながら、もう片手を軽く伸ばし、ひよりのシャツのボタンに指をかけた。
ひよりは慌ててその手を止めようとするが、遅かった。
シャツのボタンを一つはずつと、豊満な胸を大きく包んだ下着があらわになる。
「……やっ…こんなところで、誰か来たら…」
みくは返事をせず、ただいたずらっぽく微笑むと、もう一枚の羽根を取り出し、するりと下着と豊かな膨らみの間に差込み、ゆっくりと中で動かした。
「…んっ…」
思わずビクリと身体がのけ反った。
下着の間に差し込んだ羽先が、その豊かな膨らみの先端を中で擦れて刺激された瞬間――
(…だめっ…)
ビクビクッと軽く身体が痙攣し、脚から力が抜けそうになった瞬間、みくの手がそっと背中を支えた。
「あれれ、もしかしてイッちゃいましたかぁ♡……」
「……そ、そんなわけないでしょ…ちょっとさっきの任務で疲れてるだけよ」
ひよりは自身の身体の反応に驚き、思わず言い訳を口にした。
「素直じゃないなあ…でも、これでまたひとつ先輩のこと分かった気がします。ただ、あんまり無理しないでくださいね♡」
その声はいつものみくの笑顔のまま、ただほんの少し、優しくて、静かだった。
ひよりの寮の部屋まで見送ると、彼女は自分の部屋へ戻っていった。