第14話 絡みつく蔦

この日の任務は、鬱蒼とした樹海のような森で発生した淫霊の封霊だった。

報告によれば、植物を操るという厄介な淫霊。

湿気と密度の高い空気の中、ひよりは呼吸を整えながら森を進んでいく。

やがて、古びた祠のような場所にたどり着いた瞬間、足元の地面がわずかに揺れた。

 

(来る…!)

しかし、一歩遅かった。足元に絡みついた根がひよりの動きを封じ、次の瞬間には上空から降ってきた蔦が両腕に巻きついていた。

無理に引き剥がそうとしても、植物はまるで意志を持つかのように拘束を強めていく。

やがて現れた淫霊は、禍々しい笑みを浮かべていた。

「つかまえた…♡」

淫霊はそう言うと、両足は大きく開き、両腕は上に引っ張るように蔦や根を操作した。

じりじりと近づくと、おもむろにひよりのシャツのボタンを外し始める。

「ちょっと…なんなの!…」

いきなりのことで動揺するひよりを尻目に、淫霊は言う。

「悪いけど、きみにはこの子たちの栄養分になってもらうよ」

そう言って、あらわになった大きな膨らみを目掛けて、蔦が伸びてきて胸に絡みつき、蔦の葉が先端を刺激した。

「…んっ…」

微かな声が漏れた瞬間、絡みついていた蔦がわずかにうねりを強めた。

肌に触れる感触は、さきほどまでの冷たさとは違って、どこか熱を帯びている。

(……これ、まさか……)

感覚の高まりにあわせるように、蔦はまるで鼓動を持つかのように脈打ち、ゆっくりと太く成長していく。

淫霊がくすりと笑いながら呟く。

「……すごいね、こんなに反応のいい栄養源は久しぶりだよ」

胸を刺激され、ひよりのショーツはすっかりと湿ってしまっていた。

蔦の動きがふいに変わった。まるで何かを察したかのように、絡みつくような動きを見せ、緩やかにひよりの下半身へ伸び、粘り気のある液体を拭い取った。

その瞬間、周囲にあった蕾が微かに脈打ち、まるで感情を持つかのように、次々と花開いていった。

 

薄桃色の花びらが広がり、中からあらわになったのは、びっしりと細かなヒダに包まれ、わずかに糸を引いている粘膜のようなものだった。

その様子に、ひよりの背筋がひやりと粟立つ。言いようのない感覚に、思わず息を呑んだ。

「ああ、すごい……開花までさせるなんて……」

淫霊の甘く、どこか陶酔した声が、ひよりの耳にまとわりつくように囁かれる。

ひとつの花が、ふわりと舞い上がり、ひよりの胸元へと飛びついた。

柔らかな花びらがまるで意志を持っているかのように、その大きな果実をゆっくりと包み込む。

その内側から微かな蠢きが伝わってきたとき、ひよりの喉からかすれた声が漏れた。

「…ああっ…」

これまでに感じたことのない刺激に思わず声が漏れた。

さらなる花がスカートの中へと入り込み、幾重にも折り重なるヒダが秘部を刺激し、ひよりの意識を揺さぶっていく。

「どう…? これが植物の“繁殖行動”だなんて、信じられないでしょう?♡」

淫霊が揶揄うように囁き、どこか愉悦に満ちた声音で囁く。

ひよりは奥歯を強く噛みしめ、指先に意識を集中させた。

けれど、触れられている場所から伝わる奇妙な脈動は、容赦なく集中を乱す。

蔦は絡み、花は開き、緩急をつけてひよりの肌をなぞる。

「…んああっ!……」

ひよりの身体は大きく仰け反り、小さく痙攣した。

意識が遠のきかけたその瞬間――。

 

冷気が鋭く空気を裂いた。

無数の氷の刃が、舞い散るように飛来し淫霊の身体に突き刺さり、やがてその存在ごと霧散していった。

ひよりの目の前には、封霊師の女が立っていた。