第2話 微笑む女医

封霊会本部の報告室は、白い照明の下に静寂が満ちていた。

「――対象の淫霊、封霊完了。異常なしです」

神崎ひよりは、はじめての任務を終え、硬い声で報告を終えた。

シャツの袖口にはまだ、触手の残した痕がうっすらと残っている。

「お疲れさま、神崎ひより。任務は完遂と認める。初めてにしてよくやった。だが……」

報告官が言葉を区切る。

「任務後に神経性の後遺症が残るケースがある。初めてということもあるだろうし、念のため、医療課で検査を受けるように。」

「……はい。わかりました」

ひよりは従い、報告室を後にした。

シャツの中で、まだ残っている“熱”を、誰にも気づかれないように抑えながら――

 

封霊会の医療区画。

個室診察室の扉を開けると、白衣の女性がひよりに気づき、微笑んだ。

「ようこそ… あなたが、神崎ひよりさんね?」

女医は名札を軽く指で撫でながら言った。

篠宮(しのみや)りえ――封霊会所属の専属医師だ。

長い黒髪を後ろで束ね、真紅のルージュが印象的な顔立ち。

整った笑みは、どこか意味深な印象に見えた。

 

「どうぞ、おかけになって。初診ですし、丁寧に診させてもらいますね..♡」

「は、はい..お願いします」

「ではまず、触診からしていきますね..♡ そこに座って、シャツを脱いで下着を外していただけるかしら」

ひよりは戸惑いながらも診察台に腰を下ろし、胸元のボタンから一つ一つ外していった。

19歳とは思えぬ、たわわに実った乳房があらわになる。

篠宮は、医療用手袋を着け、透明なジェルが入ったボトルを取り出した。

ジェルを手に垂らすと、ひよりの胸元に静かに押し当てる。

「んっ……つめた……っ」

「ふふっ、驚かせちゃった..?♡ でもね、これじゃないと神経反応は測れないの♡」

手がぬるりと滑り、胸元からゆっくりと乳輪付近へのなぞられていく。

透明なジェルがまんべんなく肌に広がり、空調の風があたるたびに、ひよりは身を竦めた。

(これは……本当に、検査なの……?)

篠宮の手は、胸からはずれ脇腹を経て腹部へと滑らせる。

一通り塗り終わると再び、胸へと戻っていく。

そのとき、指先がかすかに先端をぴんっと弾いた。

「ん……や、あのっ……っ」

「動かないでくださいね?♡ 動いてしまうと、上手く診察できませんから……♡」

篠宮の手が胸から離れ、膝からスカートの中へとゆっくり入っていく。

「え……そんなところまで、診るんですか?」

「ええ♡ もちろん。あなたはずいぶんと感じやすい体質のようですから……♡ 特に、このあたりとか..?」

そういうと指先が秘部を下着の上から刺激した。

下着の際をなぞりながら、すべての動きが“記録”されているかのような冷静さ。

「あっ…………っ、ちが……っ」

「診察ですから..恥ずかしがらなくて、だいじょうぶよ..♡」

ひよりは、冷たいジェルとはまた異なる熱を感じるものが下着を染めていることに気づいた。

「ん、あっ……!」

(これ……診察なんかじゃ……)

羞恥と困惑の中で、ひよりは唇を噛み、目を逸らすしかなかった。

 

その後も診察は数分間続き、ようやく終わりを告げた。

篠宮は診断書をすっと机に起き、涼しげに笑う。

経過観察対象と記載されている。

「はい、診察は以上です。 おつかれさま、ひよりさん♡診断書は封霊会本部に直接送っておきますね」

ひよりは、制服を整えながら、小さく頭を下げた。

「……ありがとうございました」

胸の奥に残ったざわめきは、淫霊との戦闘とは違う種類のものだった。

でも今は、それをどう言葉にすればいいのか、わからないひよりは診察室を後にした。