
第25話 静寂の密室(後編)
公開日: 2025/08/22
寮の部屋──狭い密室に、男女ふたりが向き合って立っていた。
逃げ場のない状況。
(……いや……なのに……)
ひよりは、仕方がないと自分に言い聞かせるように、わずかな抵抗を示す。
けれど、それは本気の反発にはならず、空気をかき乱すことすらできない。
榊原の掌が、柔らかな胸を弄ぶように撫で、押し、揉んでは離す。
不意に指先が先端を弾くと──
「……っ」
反射的に声がこぼれ、胸は小さく震え、豊かな膨らみがたゆんだ。
心は嫌悪と羞恥でいっぱいなのに、身体は正直にその刺激を覚えてしまう。
「じゃあ……ベッドに行こうか」
榊原の声が落ちてくる。
ひよりは返事をすることもできなかった。
抵抗すれば携帯の写真をばらまかれる──その恐怖が、言葉を奪っていた。
ただ、言われるがままに足を動かし、脱ぎ捨てられたシャツとブラジャーが散らばるベッドの縁に腰を下ろす。
シーツの冷たさが伝わり、ぞくりとした悪寒とともに、自分の無力さを思い知らされた。
男の鼻息が荒くなり、次の瞬間にはひよりの身体はベッドに押し倒されていた。
「……きゃっ」
背中が沈み込むと同時に、布団と彼女の肌からふわりと甘い香りが立ちのぼり、二人を包んだ。
大きな胸は衝撃にぷるんと揺れ、うつ伏せになってなお形を崩さず、いやらしく存在を主張していた。
突然の出来事に心の準備などできているはずもなく、ひよりは咄嗟に両腕で男の身体を押し返そうとする。
だが、訓練の疲労で力が入らず、容易に体重をかけられ、腕は頭上に押し上げられてしまった。
「──今度、抵抗するような真似をしたら……あれがどうなるか、わかってるよね?」
耳元に落とされたその低い声に、胸の奥が凍りつく。
あれ──つまり、携帯に残された屈辱の記録。
脅しの言葉を浴びせられた瞬間、男の手が腕から離れても、ひよりは動けなかった。
両腕を頭上に掲げたまま、荒い息をのんで堪えるしかなかった。
ひよりの硬直した姿を見下ろし、榊原はにやりと嗤った。
ゆっくりと身体をずらし、顔を胸元へと近づける。
開かれた唇から、ねっとりと舌が伸び、透明な雫が糸を引きながら膨らみ先端へぽたりと落ちていく。
「……っ」
冷たい滴が肌を伝う瞬間、背筋にぞくりと震えが走った。
次の刹那、榊原は抑えきれぬ衝動を解き放つように、勢いよく咥え込み、吸い、舐め尽くした。
「ぁ……あっ……ん……」
否応なく漏れる声。
手のひらで揉まれる感触とも、指先で弾かれる痛みに似た刺激とも違う。
口の中に含まれ、舌先で弄ばれる感覚は、甘く痺れるような快感として刻まれ、ひよりの身体を翻弄する。
(……いや……なのに……身体が……)
心は必死に拒んでいるのに、全身は火照りを増し、抗えない熱に呑まれていく。
押し倒された衝撃で乱れたミニスカートの奥、下着がじんわりと湿っていくのを、ひより自身も自覚していた。
榊原の手がそこへ伸び、布越しに熱と湿りを確かめる。
「……んっ……」
わずかな声が零れた瞬間、下着はあっけなく押し上げられ、指先が肌に沿って忍び込む。
柔らかな動きで割れ目をなぞられるたび、腰が小刻みに震えた。
榊原は胸に夢中で言葉ひとつ発さない。
だが、指先は確実に内へと侵入し、ゆっくりと、しかし容赦なく進んでいく。
そして、十分に入ったと思われたそのとき、動きが一変した。
激しい衝撃が内側をかき乱し、中での蠢く刺激が重なり合う。
「…ああぁあっん…!」
抑えきれず大きな声が漏れ、慌てて自らの口を手で塞ぐ。
その様子を見て、榊原は唇を離し、意地悪く囁いた。
「だめだろ……そんなに大きな声を出したら。誰かに聞かれてしまうじゃないか」
羞恥と恐怖に加えて、声を押し殺さなければならないという状況が、妙に心をかき乱す。
胸の奥で心臓が早鐘を打ち、ひよりの鼓動は抑えようもなく速まっていた。
「……んっ……んんっ……」
口元を手のひらで覆うことで、かろうじて声だけは押し殺す。
だが、震える吐息は止められず、漏れるたびに胸が上下した。
榊原はその姿を横目に楽しむように、指先をさらに奥へ沈めていく。
付け根から大きく動かすように中を抉られ、否応なく刺激が広がった
「っ……んーっ!」
全身に稲妻のような衝撃が走り、上体を大きく反らせる。
腰ががくりと落ち、小さな痙攣のように震えた。
荒く乱れる呼吸の合間、恐る恐る視線を向けると──榊原の手がゆっくりと腰元へ。
布地にかかった指先は、ためらいもなく下ろされていく。
「いやっ……!」
視界に布地が膨らんでいるのが入り思わず、思わず声が上がり、ひよりは反射的に顔を逸らす。
だが、その声も虚しく、布地を押し上げていたものが解放され、姿をあらわになる。
生地によって抑えられていた分、それは勢いよく反り立つ。
ひよりは、初めて目の当たりにする"それ"の存在に耐えられず、ぎゅっと目を閉じた。
男はそれをスカートをめくりあげ、下着越しに押し付けるようにして存在を主張させた。下着が熱と湿りでじわりと染まっていく。
「んっ……もう、それ以上は……やめてください……」
か細い声で懇願しても、返事はない。
下着から溢れた液体を、肉棒の先端が絡め取りながら布と肌の隙間をなぞる。
(……いや……直接、当たってる……)
羞恥と恐怖で頭の中がいっぱいになり、呼吸が荒くなる。
次の瞬間、榊原の低い声が耳元に落ちた。
「……じゃあ、入れるよ」
「いやっ……中は……っ」
最後まで言い切る前に、熱がぬるりと侵入してきた。
「──っ……あぁっ!」
頭の中が真っ白になり、無意識に身体が大きく跳ねる。
堪えようと唇を噛み締めるが、震えは止められない。
「……すごいな。君の中が反応するように締め付けてくる」
耳元で囁かれる言葉が、羞恥と屈辱をさらに強める。
嫌悪で胸はいっぱいなのに、身体は確かに熱を帯びて、受け入れてしまっている。
(……いや……なのに……どうして……)
胸の奥で何かが揺れ、涙が浮かぶ。
初めての感覚は痛みと甘さが入り混じり、複雑に心をかき乱していった。
男の腰が、静かに、ゆっくりと前後に揺れ始めた。
その律動に合わせてベッドがわずかに揺れ、ぎしり、と軋む音が密室に響く。
熱を帯びた象徴が内側で脈打ち、体温よりもさらに熱い鼓動がひよりの奥深くにまで伝わってくる。
押し広げられるたびに、じわじわと痺れるような感覚が広がり、羞恥と甘い疼きがないまぜになって胸をかき乱した。
「……っ……」
羞恥と、かすかに走る痛みに堪えきれず、ひよりは両手で顔と口元を覆った。
その指の隙間からこぼれる吐息は、荒く震えている。
「……あれ、もしかして……中も初めてだったのか」
囁きに、胸がぎゅっと縮こまる。
キスのときと同じように、この男によって初めてを奪われていく。
頭が真っ白になり、思考はまとまらない。
榊原の口元が、ねっとりと笑んでいるように見えた。
「ああ……最高だ……」
その瞬間、さらに男のそれが硬く張り詰めたものになり、内側を押し返し、奥まで深く満たされる感覚に思わず息を詰める。
腰が動くたびに、壁をかき分けられるような圧迫が伝わり、熱い疼きが広がっていく。
「……あっ……あぁっ……」
声が抑えきれず、唇の隙間から零れ落ちる。
胸の奥から熱が込み上げ、全身を支配していく。
大きく身をよじると、シーツの上で上下に弾むように揺れ、小さく身体を震わせた。
初めての感覚に翻弄され、羞恥も恐怖も、すべてが溶かされていく。
(……なにも……考えられない……)
ひよりはただ、抗いきれない熱に身を委ねるしかなかった。
いつのまにか、ひよりの顔と口元を覆っていた両手は、シーツをぎゅっと握りしめていた。
腰の動きが徐々に速くなるにつれ、拳には自然と力がこもっていく。
「……はぁ……もう、イくよ……」
男の声。
経験がないはずのひよりにも、その意味は理解できた。
「……っ」
息遣いが荒々しさを増し、激しく打ちつける動きが限界を告げる。
そして、次の瞬間──それを中から抜き出すと、ひよりの豊かな乳房へと向けられた。
「あっ……!」
勢いよく放たれた白濁が、豊かな膨らみを直撃する。
弾かれた雫が飛び散り、滴り落ちながら形を描くように乳房を伝い、ゆるやかに首元まで垂れていく。
どろりと粘る液体は、蛍光灯の光を受けて妖しく反射し、異様な艶めきを放った。

鼻腔を突く生々しい香りが、ひよりの奥深くまで届き、思わず息を止める。
「……はぁ……はぁ……」
荒く息をつく男を前に、ひよりはぐったりと仰向けになったまま、ただ滴り落ちていく粘液を見つめていた。
(……これが……男性の…)
羞恥と混乱、そして得体の知れない熱が胸を締め付ける。
拭いきれぬ滴が肌に張り付き、いつまでもその感覚を刻みつけていた。
「……はぁ……ふぅ……すごいよ。こんなに気持ちがいいなんて……」
榊原は余韻に浸るように荒い呼吸を落ち着け、むくりと身を起こした。
脱ぎ散らかしたパンツを履き直しながら、ふとこちらに視線を投げる。
「……そうだ、約束だったね。画像は消しておくよ。でも──また付き合ってくれよ。君も……心のどこかで求めているはずだろう」
呆然としたまま、言葉を返せないひよりに、それだけを残す。
「じゃあ、そろそろ戻るよ」
軽い調子の声を最後に、榊原は部屋を後にした。
扉が閉じる音が響き、ようやく彼の気配が消えたことを確認する。
緊張の糸が切れたように、ひよりはそっと視線を落とした。
胸元にまだ残っている、半透明の粘液。指先で掬うと、ぬるりとした感触が生々しくまとわりつく。
すでに肌から滴り落ちたものはシーツに染みをつくり、いやらしい証を刻んでいた。
枕元のティッシュを取り、胸元を拭う。
しかし拭き取ったことで香りがふわりと立ち上り、思わず眉をひそめる。
脱ぎ捨てられたブラジャーとシャツを手に取り、身につけて整えると、鼓動の速さがまだ治まっていないのに気づいた。
苛立ち、屈辱、恥ずかしさ──そして初めてを奪われた衝撃。
さまざまな感情が渦を巻き、ひよりの胸を押し潰す。
整理のつかないまま、彼女はしばらくベッドに身を横たえ、ただ荒ぶる鼓動を落ち着かせようとしていた。
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