第34話 秘めたる記録(前編)
公開日: 2025/11/01
ひよりは寮の部屋でシャツに腕を通し、ひとつずつ丁寧にボタンを留めていった。
張りのある豊かな胸は布を押し上げ、シャツ越しでもその存在感を隠しきれない。
最後のボタンをかけ終えたとき、ふと机の上に置かれた小瓶へと目をやる。
昨晩の任務で採取した淫霊の体液が入った瓶だ。篠宮りえから、治療薬の開発のために密かに依頼されていたもの。
指先で瓶を持ち上げ、軽く傾けると、中の白濁した液体がどろりと重たげに形を変える。
その粘りを見つめていると、不意に昨晩、熱を帯びた液体が自分の肌を伝って滴った感触が蘇り、胸の奥がきゅっと疼いた。
(これさえあれば…治療薬の開発が進むはず…)
わずかな期待と羞恥を抱えながら、小瓶をスカートのポケットにそっとしまう。
身支度を整え、意を決して部屋を出ると、足は自然と篠宮のいる医療棟へと向かっていた。
篠宮の診察室の扉は半ば開かれていた。
覗き込むと、デスクに向かっていた篠宮が気づいた。
「あら、もしかしてもう採取してきてくれたの。どうぞ、入って」
「…あ、はい」
ひよりは足を踏み入れ、扉を閉めて小瓶を取り出した。
中で白濁とした液体が揺れ、その粘りを見た瞬間に昨夜の感覚が脳裏をよぎり、ほんのりと頬が熱を帯びる。
「こんなに早く手に入るなんて、さすがね」
篠宮はそれを受け取ると、デスクの上に置き、ゆっくりと視線をひよりに戻す。
「それより…身体の方は大丈夫だったかしら?」
そう言いながら、篠宮はすっと立ち上がり、背後の扉に向かって鍵をかける。
カチリと乾いた音が響いた瞬間、ひよりの胸に昨夜の光景がフラッシュバックし、息が詰まる。
「え…大丈夫です…」
間を置きながらも、なんとか答えを絞り出す。
「そう…よかったわ。少しでも処置しておいた甲斐があったのね」
篠宮は頷き、その声音にはどこか安堵が混じっていた。
「それで……治療薬の開発、進むんですよね?」
ひよりは、胸の高鳴りを押さえるように問いかける。
「ええ。このあと研究室にまわして解析してもらうから。何か分かればすぐ知らせるわ」
「わかりました。お願いします」
用件は済んだかに思われたその時だった。
「ただ……」
篠宮の声がふっと低くなる。
「あなた自身の記録があれば、きっと開発に大きく役立つはずなの。もうひとつだけ、お願いを聞いてくれないかしら」
「わ、わたしの……記録?」
「ええ。単刀直入に言うわね。あなたの生体反応を記録して、それを解析に使いたいの」
淫霊の体液の成分と、自分の反応の記録を組み合わせる──
それが篠宮の狙いだと、すぐに理解できた。
(そんなこと……)
戸惑う気持ちはあったが、すでに体液を採取してここに持ってきてしまった手前、断ることは裏切りのように思えてならない。
「で、でも……どうやって、その……生体反応を……」
「そうよね」
篠宮は静かに頷くと、キャビネットの引き出しを開けた。
そこから取り出されたのは、親指ほどの丸みを帯びた円柱の器具。
「これを膣内に入れてもらうの。あなたの反応を直接記録できる仕組みになっているわ」
あまりに淡々とした説明。
だが、ひよりの心臓は今にも破裂しそうなくらいに高鳴り、想像だけで頬が熱を帯びていく。
「……っ、中に……ですか……」
「記録したいのは淫霊からの刺激よ。そのまま任務に向かってもらう必要はあるけれど……」
篠宮はひよりの視線を受け止め、微笑を浮かべる。
「どうかしら? 無理にとは言わないわ。ただ──これがあれば、治療薬の完成は近づくと思うの」
すべてを委ねるような声音。
その優しい口調が、かえってひよりの心を揺らし、答えを急かしてくるように感じられた。
少しの間を置いて──
(ここまできたら……やるしかない……)
「……わかりました。やります……」
戸惑いを隠しきれぬまま、震える声で返事をする。
「ありがとう。あなたならそう言ってくれると思っていたわ」
篠宮はひよりの両手をとり、ぎゅっと温もりを込めて握りしめた。
「決めたからには、私がしっかりサポートするから。安心して任せてね」
そう言うその瞳は冷静で、どこか艶めいて見えた。
「この後、任務に出るのでしょう? ……なら、さっそく準備しましょうか」
「は、はい……それで、私は……どうすれば……」
「いまから“これ”を入れるから、下着を脱いで、そこのベッドに腰かけてもらえるかしら」
「えっ……あ、あの、それは自分で──」
か細い声を、篠宮がすぐに遮る。
「だめよ。それでは正確に記録ができないし、医師である私が処置をしなければ意味がないの」
思ってもいなかった展開に、羞恥が一気にこみあげてくる。
胸の奥から熱がこみあがり、首筋を伝う汗がじわりと浮かんだ。
「それに……もし自分でやって怪我でもしちゃったら困るでしょう?」
諭すような声音に、ひよりはもう何も言い返せなかった。
ただ、胸の奥でとくんと跳ねる鼓動が、自分でも制御できなくなりつつあるのを感じていた。
こくりと小さく頷くと、ひよりは震える指先をスカートの中へと忍ばせた。
下着に指をかけゆっくり押し下げると、落ち着いた色合いの大人びた下着がスカートの裾から覗く。
誰かに覗かれているような羞恥が背筋を這い上がる。
下着はすらりとした脚を伝い、両足を順に抜けていく。
陰部があらわになった瞬間、ひよりは無意識に膝を寄せ、最後にそれをカゴにそっと置いた。
覆いを失った部分は、空気にさらされて妙に涼しく、逆に敏感に感じられる。
居心地の悪さを抱えたまま、ひよりは診察室のベッドに腰を下ろした。
スカートの裾を慌てて抑え、裏地を当てて少しでも守ろうとする。

「それじゃあ……少し、ほぐしていきましょうね」
そういうと、篠宮もベッドにあがりひよりの膝に手を当て脚をひろげさせた。
「っ……」
緊張でこわばる太ももが少しずつひらかれ、隠していた場所が露わになった。
薄桃色の花弁が、艶めくようにしっとりと濡れているのが見える。
「あのっ……」
羞恥に押されて、ひよりは思わず顔を背けた。
頬は真っ赤に染まり、耳まで熱が広がっていく。
「ふふ……そんなに恥ずかしがらなくてもいいのよ」
篠宮の声音はあくまで穏やか。
だがその言葉に、余計に胸の奥がずきりと疼き、呼吸が速くなるのをひよりは自覚せざるを得なかった。
ご意見・ご感想は X(Twitter) @ke8aiart までお寄せください。