第35話 秘めたる記録(後編)
公開日: 2025/11/01
篠宮の白い手袋をした指先が、ゆっくりとひよりへと近づく。
緊張で胸が上下に揺れた次の瞬間、指の腹が割れ目にそっと触れた。
「んっ……」
ほんの一撫で。
それだけなのに、直接触れられた衝撃に声が洩れる。
篠宮は光を反射するわずかな雫を指先で掬い取り、そのまま縁に塗り広げていく。
また指を上下に動かせば、絡みついた粘り気のある液が糸を引き、全体へと艶めかしく広がった。
「……ぁん……」
頬が赤く染まる。自分の反応が篠宮に伝わってしまっている。
十分に潤ったのを確かめると、篠宮はためらいなく中指をそっと中へと入れ、
第一関節まで入ると、内側を押し拡げながらゆっくりと動きを始める。
「んっ…ああ…」
異物感と甘い疼きが一度に押し寄せ、ひよりの脚は思わず閉じそうになる。
だが篠宮はもう片方の手で閉じそうになる膝を押さえた。
後戻りできない状況を理解したとき、胸の奥がぎゅっと掴まれたように締めつけられ、心臓が早鐘を打つ。
「いいわ、その調子……少し我慢してね」
篠宮の落ち着いた声に従い、ひよりは小さく息を呑む。
そして指はさらに奥へ。第二関節まで進むと、また内部を探るようにゆっくりと動き出した。
「ぁあっ!……」
先ほどとは違う、深い場所を刺激され、全身がびくりと震える。
その振動に呼応するように、奥底からとろりと分泌が溢れ出し、指先を濡らしていく。
耐えきれない感覚に、ひよりは唇を噛みしめ、必死に声を抑え込んだ。
篠宮は指先を抜き取ると、わずかに濡れ広がった部分を確かめるように視線を落とし、そのまま体勢を変えて顔を近づけた。
医師の真剣な目に射抜かれ、ひよりの胸が高鳴る。
「……そんな、見ないでください……」
潤んで艶めくそこを凝視されることに堪えきれず、思わずスカートの裾を引き寄せ隠そうとした。
だが、その動きを篠宮の両手が遮る。柔らかい太ももをしっかりと押さえ込まれ、身動きが封じられた。
「ちょっとだけ確認させてもらうわね」
低く落ち着いた声とともに、篠宮の唇が陰部に触れた。
一瞬の温もりに息を呑んだ次の瞬間、舌が伸びて秘部を舐め上げる。
「いやっ……あっ……!」
走った電流のような感覚に、ひよりは腰を引こうとするが、脚を押さえられ逃げ場はない。
「そ、そんなとこ……舐めないで……くださ……あんっ!」
言葉は震え、必死の否定とは裏腹に、身体は小刻みに震えだす。
腰が無意識にくねり、篠宮の舌を求めるように動いてしまう。
(やだ………どうして、こんな……)
篠宮は言葉を発さず、ただひたすらに舌を這わせ、体液を吸い出すように音を立てる。
じゅる、じゅるる……
淫らな水音が診察室に響き、ひよりの耳を犯す。
「んっ……ああんっ……!」
その音と刺激に耐えきれず、ひよりの身体からはさらなる熱と潤いが溢れ出す。
視界が揺れ、頭が真っ白になっていくのを必死に繋ぎ止めようとした。
数分ほど続いた舌の責めがようやく途切れ、篠宮はひよりから口を離した。
唇に残った透明な雫を、舌先でぬるりと舐め取る仕草はあまりに艶めかしく、ひよりの視界を揺らす。
全身はとろけたように力が抜け、ただ荒い呼吸を繰り返すしかなかった。
少し間を置いたあと、篠宮はさらりと口にする。
「……うん、匂いや味に異常はなさそうね。びっくりしたと思うけれど、こうやって嗅覚や味覚で確認するのも大事なのよ」
その声は医学的な冷静さを帯びていたが、ひよりの耳にはもうまともに届いていない。
診察室には、甘酸っぱいような香りが微かに漂いはじめていた。
――そして。
「じゃあ、そろそろ挿れてもよさそうね」
唐突に告げられた言葉に、ひよりははっと我に返る。
篠宮の手には、すでに全長五センチほど、直径三センチほどの円柱状の器具が握られていた。
丸みを帯びた先端には、取り出し用の小さな輪がついている。
「……っ」
思わず息を呑むひより。
「はい、力を抜いてくださいね」
優しく言いながら、篠宮はその先端をゆっくりと近づけた。
無機質で冷たい感触が触れた瞬間、さきほどまでとは違う種類の緊張がひよりの身体を走る。
すでに篠宮の指で十分に濡らされていたせいで、抵抗はなく、器具は少しずつ奥へと進んでいく。
そのたびに、敏感になりきった肉がきゅっと反応し、腰がわずかに浮いてしまう。
「んっ……ま、まだ……ですか……」
声が震える。
「あともう少しよ――」
篠宮は後ろからそっと指で押し込み、さらに深く器具を導いていく。
さきほど指先が中で刺激していたあたりに器具が到達すると、今度は指先をぐっと押し込んだ。
「――あああっ!」
ひよりの身体は一気にがくがくと痙攣し、電流のような衝撃が全身を駆け抜けた。
篠宮はゆっくりと指先を離す。
「…はい。おつかれさま、これで大丈夫よ」
ひよりの視界に映るのは、スカートの奥からかろうじて覗く、器具の先端に取り付けられた小さな紐だけだった。
全貌は見えないが――確かに身体の奥に、あの無機質な異物が収まっていると分かる。
わずかな異物感と、そこからじんわり広がる熱。
意識してしまうと鼓動が早くなり、胸の奥でかすかな羞恥と期待が交じり合った。

「今日のこのあとの任務が終わるまでは、勝手に取り外しちゃだめよ? 私は明日の朝までここにいるから、終わったらまた来てくれるかしら?」
「……わかりました」
小さな声で返すと、ひよりはベッドから足をおろし、カゴに置いてあった下着にそっと手を伸ばす。
その瞬間、太ももにひやりとした感覚――透明な液が一滴、ゆっくりと垂れた。
篠宮に気づかれないよう、スカートの裏地でそっと拭い取り、急いで下着を履く。
下着がじわりと湿っていく感覚が、ますます自分を意識させた。
「それじゃあ、任務気をつけてね。何かあったら私に連絡してちょうだい」
篠宮は穏やかに微笑んで送り出す。
ひよりは小さく会釈し、診察室をあとにした。
廊下を歩きながら、自分の身体にそっと意識を向ける。
下半身には、確かに何かが存在しているという違和感。
けれどそれは不快さではなく、妙な熱とともにじんわりと意識をかき立てていく。
(……変な感覚はあるけど……任務には支障なさそう……)
そう思い込むように自分を落ち着けながらも、先ほどの刺激の余韻はまだ消えきらない。
器具が本当に記録を取っているのか――そんな疑念を抱きつつも、奥に残る疼きを誤魔化すように、ひよりは任務の場所へと向かっていった。
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