第36話 内に仕込まれたもの(前編)
2026/01/05
わずかに感じる下半身の異物感ーー。
女医・篠宮(しのみや)りえの手によって挿れられた、治療薬の開発のための記録用器具。
歩くたびにその存在を思い出させるように、内側をこつこつと小さく刺激してくる。
(…大丈夫、支障なんてない…はず…)
自分に言い聞かせながらも、乾ききらなかった下着の布地が肌に張りつき、冷気と混ざって余計に意識を奪っていく。
日はすでに沈み、鬱蒼とした林の奥へと足を踏み入れる。
瘴気を含んだ湿った風が吹き抜けるたび、胸の奥がずくりと疼き、頬がわずかに熱を帯びる。
(…集中しないと…)
そうして数分。
霧のように漂う瘴気の中に、黒く揺らめく影を捉えた。
「いた…!」
駆け出し、拳に霊力を込めて振り払う。
「封ッ…!」
だが淫霊はひらりとかわし、拳は虚空を切り裂いただけに終わった。
距離をとった淫霊が、嗤うようにひよりを見下ろす。
(…次こそ仕留める…!)
ひよりは呼吸を整え、拳に力を込めた。
淫霊の動きは確かに素早い。だが封霊師として鍛えた自分なら必ず届く——そう確信していた。
黒い瘴気に包まれた淫霊はゆらりと漂い、嗤うように歪んだ顔を覗かせる。
その笑みに苛立ちを覚えた瞬間ーー
ヴヴッ……
「…っ!」
下腹に、不意の電流のような刺激が走った。
篠宮に挿れられた器具が、突如として震え始めたのだ。
(えっ…)
ヴーッ
振動はまるで淫霊の瘴気に呼応するかのように強弱を繰り返し、膣壁を容赦なく震わせる。
腰の奥で痺れるような感覚が広がり、脚が勝手に竦む。
「あっ…ん…」
抑えきれない吐息が漏れ、慌てて唇を噛み締める。
脚を閉じて、わずかな隙間を埋めるように太ももを擦り合わせなければ立っていられなかった。
(だめ…集中しないと…任務中なのに…!)
淫霊はその様子を見透かしたように、ふらりと腕を伸ばす。
黒く長い蔦が鞭のようにしなり、地面に叩きつけられた。
「…っ!」
かろうじて跳ねてかわしたものの、腹の奥を震わせる振動が続き、呼吸は荒い。
汗が頬を伝い、胸も大きく上下する。
ヴヴー……
「んっ…あぁ…っ」
微弱な振動がふたたび下腹を揺らし、ひよりの腰は勝手に反応する。
堪えようと力を込めれば込めるほど、内股になった脚の付け根に、異物感がじわりと広がっていく。
(な、なんなのこれ……振動するなんて、聞いてない…っ)
乾きかけていた下着は、再びしっとりと湿りを帯び、熱を孕んだ水滴が肌を伝って落ちる。
自分の体が発していると理解した途端、胸の奥で羞恥と恐怖がないまぜになり、呼吸が乱れた。
(これじゃ…闘いに集中できない…)
濃い霧が林の一帯を覆い、視界を奪う。
汗ばんだシャツがぴたりと肌に張り付き、透けた布越しに若々しい肌色が浮かび上がる。
ヴヴッ……!
脚の力がわずかに緩んだ瞬間、容赦のない刺激が膣奥に届き、思わず身体が熱く反り返った。
背筋を伝う汗が冷たく感じられるほど、内側は灼けるように疼く。
片手が無意識にスカートの裾へ、そして下着の中へと伸びる。
指先が器具の先端から伸びる紐にかかる。

しかし、その瞬間、篠宮の言葉が脳裏をよぎるーー
"勝手に取り外しちゃだめよ?"
理性を必死につなぎ止め、紐から指を離す。
代わりにスカートの布をぎゅっと握りしめ、震える太ももを押さえ込んだ。
(……早く、この闘いを終わらせるしかない……!)
決意を込め、拳に力を集めたひよりは、一直線に淫霊へと駆ける。
黒い影を捉え、拳を振り下ろそうとしたその瞬間ーー
ヴヴーッ……!
「っ……ああっ!」
さきほどまでの微弱な振動とは比べものにならない強烈な震えが、腰の奥からせり上がってくる。
全身がびくりと痙攣し、拳は淫霊の頬をかすめて虚空を切った。
(しまった……!)
次の瞬間、淫霊は牙をむいたように笑みを浮かべ、素早く両腕を振るう。
無数の蔦が地面から生え出し、ひよりの手足へと絡みついた。
「やっ……っ!」
抵抗する間もなく、両手首も足首も絡め取られ、ひよりの自由を奪った。
ヴヴヴヴ……!
器具は止まることを知らず、不規則に強弱を繰り返す。
内奥を這う震えが波のように押し寄せ、ひよりは必死に股を閉じようとするがーー
蔦が足を大きく広げ、羞恥を強制する。
蔦の表面はぬるりと滑り、肌に触れるたび、艶やかな光沢を残していく。
必死に理性を繋ぎ止めるほどに、身体は裏切るように熱を帯びていく。
荒い呼吸とともに胸が上下に揺れる。
それに呼応するかのように、器具の振動はさらに速度を増した。
ひよりの奥底をぐずぐずにかき乱すかのように、強く痺れる刺激が繰り返される。
「あぁんっ……やっ……やめ……っ」
抑え込もうとする言葉とは裏腹に、吐息は甘く熱を帯び、声が震えてしまう。
淫霊は身動きのとれないひよりを前に、にたりと嗤う。
林を覆う瘴気がいっそう濃く渦を巻き、ひよりの視界をゆらめかせていく。
次に訪れるものを予感しながら、ひよりは必死に意識を繋ぎとめようとした。
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