第6話 静かなる余波
封霊会の寮に戻った神崎ひよりは、シャツにミニスカート姿のままベッドに身を沈めた。
マットレスの柔らかさが、任務の緊張から解き放たれた身体をじわりと受け止める。
昨日の任務から続く熱っぽさは、まだ引いていない。
風邪のような怠さとは違う、もっと身体の芯がじんわり火照るような感覚――。
(昨日の、透明の粘液のようなものが原因……?)
身体を拘束され、霊気の粘液に包まれた感触が、未だ肌の奥に残っている気がした。
拘束された脚、這い寄る触手、逃れられなかった刺激。
目を閉じても、記憶の中で霧のようにまとわりつく。
ひよりは小さく息を吐き、シーツの上で身をよじった。
「……ふぅ……大丈夫。時間が経てば、落ち着くはず」
ふと、無意識に自分の片手が、シャツのボタンを1つ外し、その年齢に似つかわしくないほどの大きな胸を下着の上から触れた。
じっとりと身体が熱くなる一方で、少し涼しく気が楽になるような感覚がした。
もう片手は太ももに伸び、指先が肌に滑るように触れ、徐々にスカートの中へともぐっていった。
下着が湿っていることが指先からも分かった。
「んっ…」
その瞬間、びくんと身体が跳ねて息を止めた。
(…あれ、私なんで、こんなこと……)
ひよりは慌ててシャツとスカートを整え、両手をもとの位置に戻した。
シャツやスカートの裾が肌に擦れるだけで、身体が勝手に反応してしまう。
度重なる任務でのあの“ぬめり”が、彼女の体質の深層に火を灯してしまったのだろうか。
「これが……“反動”? 私の、この体質の…」
ひよりは自分の手のひらを見つめた。
確かにこの体質は、刺激を受ければ受けるほど、力に変えられる。
だが、もし──その代償として、この過敏な感覚が制御できなくなっていくのだとしたら。
「こんなことで、負けていられない。姉さんの行方を、知りたいのに……」
声に出した言葉が、寮の静けさに虚しく溶けた。
窓の外から吹き込んだ風が、カーテンを揺らし、下着が少し冷えるのを感じた――。
(……それでも、進むしかない)
ひよりは目を閉じ、火照る感覚が静まるのをじっと待った――。