第7話 沈殿する瘴気

封霊会・医療棟。

薄く漂う薬草の香りと、冷たい床の感触。神崎ひよりは静かに扉を開け、部屋の中へと足を踏み入れた。

「いらっしゃい、ひよりちゃん。聞いたわよ〜、前回の任務からいろいろあったそうね…大変だったでしょう?♡」

診察台の横で手袋をはめながら、やけに大人の色気を感じさせる声で話しかけるのは、前回と同じ女医・篠宮りえだった。

その目はどこか試すようで、ひよりの心拍がわずかに跳ねた。

「前回は、経過観察と診断書を書いたから、今回はもう少し詳しく診ていくわね…♡ シャツとブラジャーは脱いでそこの診察台に横になってちょうだい」

ひよりは言われるままシャツの前ボタンを順番に外し、脱いだ衣類をカゴに入れて、診察台に横たわった。

涼しげな空気に触れた肌が、ほんのりと粟立つ。

豊かに育った大きな胸は横になっても、やや形状が保たれて張りを感じさせる。

「では、触診からはじめていきますね」

篠宮が椅子に座ったまま近づき、手袋越しに胸元に触れる。

徐々にその膨らみにかけて、優しく滑らせるような触診。

力はまったく入っていないのに、まるで内側まで見透かされているような感覚がある。

「……やっぱり。前回より瘴気が奥まで溜まっているようね……任務で一体どんなことがあったのかしら…?」

そういうと、手のひらを大きく開きその大きな膨らみを優しく揉み始めた。

「…んっ……あの、これって……」

「はい…? 何があったか教えてくれないと、正しい処置ができないわ… で?何があったのかしら?♡」

篠宮の意地悪そうにそう言うと、ときに指先ですっかり固くなっている先端を刺激した。

「……あんっ……それは……任務中に…んっ……いんれいに…」

「うんうん…それで…淫霊にどんなことをされたの?♡」

指の腹を使ってその先端を上下に動かしたと思えば、今度は指先でピンと弾くように緩急をつけて刺激した。

「んんっ……からだを…拘束されて…粘液のようなもの…を……塗られて…」

ひよりは自分でも顔が真っ赤に染まっていくのを感じた。

自分で説明していることと、同時に身体的な刺激を受けて余計に恥ずかしくなった。

「そう…それってこんな感じかしら?…♡」

そう言うといやらしくねっとりとした触り方へと変わった。

スカートの中の下着がしっとりと濡れ始めていることに気づき、脚をぎゅっと内股にしてしめた。

「そう… このままだと、任務にも支障がでるだろうから、今ここで処置してしまいましょう。…よろしいですね?」

「えっ……あ、はい…」

ひよりは思わず流れで受け入れてしまった。

「ふふ、では始めましょう… 無理に我慢する必要はないからね」

篠宮は、それまで動かしていた手をパッと止めて、助手を呼び出した。

「今からする治療は中途半端になっちゃうとよくないから、ちょっとだけ動かないようにしますね♡」

そう言うと、助手とともに、手際よくひよりの四肢に特殊なマジックテープのようなものを巻き付け、診察台に固定した。

健康的な艶肌が診察台の上で大の字になった。

「…えっ、あの、これは一体……」

「心配しなくても大丈夫よ、痛くはしないから…♡ ただ、どちらかというと気持ちよくなる感じ…かな?」

恥ずかしさと驚きを隠せないひよりを横目に、篠宮は淡々と治療の準備を進めた。

脚が固定されたことにより、なんの妨げもなく片手がスカートの中へと伸びる。

指先で下着の染み部分に触り、わずかに下着から漏れたねっとりとした液体を拭き取るように動かし採取した。

「やっぱり…こんなに反応してる…♡」

ひよりはあまりの恥ずかしさに身体をよじったが身体が固定されていて、わずからながらに内股になることがやっとだった。

篠宮が、淡く光る器具を取り出すと、再びスカートの中へと入れ下着越しにそっと当てた。

器具が小さく振動を始めた瞬間――

「……っ!!あっ!」

思わず大きな声が出てしまった。全身に、じんわりと波紋のような感覚が広がり痛みはない。

むしろ、何かがゆっくりと込み上げてくるような、不思議な感覚。

胸の奥に、言葉にならないざわめきがこみ上げてくる。

「ゆっくりでいいわよ…♡ これはあなたの中に沈んでいた瘴気が、流れ出そうとしている証なの」

器具を少し滑らせるたびに、また違った感覚になり、ひよりは思わず腰が反り、呼吸が浅く早くなる。

「…ああっ…んっ…はあっ……」

(…なにこれ…やばいかも……)

額に汗が滲む。だがそれは、不快なものではなかった。

「あともう少しよ…♡ いい反応してるわ…… ここでちゃんと治療しましょうね♡」

篠宮はそう言うと、器具をもっていないもう片方の手で胸を刺激し続けた。

(……もうっ…むり…)

「……ああっ!!」

その一瞬、ひよりの全身に電気のようなものが走り、身体がこれまで以上に反った。

胸の奥に巣くっていた重たい何かが、ふっと抜け落ちるような感覚とともに、体が軽くなったのが分かった。

「はい、これで今日の治療は終わり。半分くらいは流れたかしらね…」

ひよりは、息を切らしながら、自分の身体に起きたことが信じきれずに驚きを隠せない様子だった。

(…本当だ、確かに力がみなぎってくるような感覚がする……)

「あ、少しよくなったからって、また任務で無茶しちゃだめよ?♡」

そう言いながら、拘束具のようなものを取り外し、ひよりの身体を起こした。

篠宮は診断書に何かを書きながら、にこりと微笑んだ。

「次も、きちんと来てちょうだいね? まだ完治したわけではないんだから」

「……わ、わかりました。ありがとうございます」

ひよりは立ち上がりながら、少し疲労感と燻るような余韻を感じていた。

だが同時に、身体が軽くなったのも確かだった。

(もっと、自分の身体を理解して、ちゃんと制御しないと…)

その決意を胸に、ひよりはそっと医療棟を後にした。